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タワーマンションの高層階の固定資産税が改正の背景・どのくらい上がったか?

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2017年の税制改正で、タワーマンションの固定資産税が見直される事になりました。

高層階は眺望と日照条件で優位な上、相続税対策の温床になっているとの指摘が出ているなど、やや複雑な問題にメスが入ろうとしています。

対象となるのは、同年4月1日以降に購入した場合です。

タワーマンション固定資産税改正の背景

先ず、タワーマンションの定義ですが、「高さが60mを超える建築物の内、複数の階に住戸が所在しているもの」となっております。

居住用超高層建築物とも称され、概ね地上20階以上のマンションが対象となる様です。

処が、こうした高層マンションの場合、当然ながら高層階の方が低層階よりも優位になる事情が目立って来ております。

売却する場合も、高層階の方が高く売れますし、賃貸として活用するにしても入居者が比較的見つかり易いようです。

「であるにも拘わらず、どの部屋も固定資産税が同じというのはおかしい」といった不満が出てきました。

今度の税改正には、こうした経緯があるようです。

改正前は上も下も同じ

さて、税改正の具体的な内容に移ります。

区分所有マンションの場合は、改正前、改正後に関係なく、先ずマンション一棟全体の評価額を出して固定資産税が算出されます。

続いて、エントランスやエレベーターホール、廊下、階段など共有部の総床面積を区分所有者の専有部の床面積の大きさに応じて割り振り、それを専有部の床面積に加算して課税床面積を算出します。

ですから一般に、登記床面積よりも課税床面積の方が大きくなります。

 

では、税改正前の区分所有マンションの固定資産税について、その算出例を紹介します。

改正前では、マンション一棟の固定資産税を、総床面積に対する課税床面積の比率に応じて按分します。

例えば、課税床面積50㎡が20戸、同100㎡が10戸のマンションがあり、一棟の固定資産税が1000万円であったとします。

総床面積は、50×20+100×10=2000㎡となります。

ですから、課税床面積50㎡を一戸所有している場合の固定資産税は、1000(万円)×50÷2000=25万円。

同100㎡を一戸所有している場合は、その倍ですから50万円となります。

この算出法ですと、1階であろうが最上階であろうが、課税床面積が同じならば固定資産税も同額となります。

改正後、上に行くほど、課税床面積が大

次に、改正後の固定資産税ですが、実際の課税床面積が同じであっても、階層が上になるに従って課税床面積が増えていくよう補正するという手法を採ります。

そこで登場するのが「階層別専有床面積補正率(%)」です。

この補正率は次の式から求めます。

階層別専有床面積補正率(%)=(階層-1)×10÷39+100。

この補正率を実際の課税床面積に乗じたものを、ここで仮に”補正課税床面積”と呼ぶことにします。

そして補正課税床面積の大きさでマンション全体の固定資産税を按分して、各区分所有者の固定資産税を算出する訳です。

 

上式からお分かり頂けると思うのですが、1階は100%、つまり補正無しという事になります。

ここで気になるのが、上式中の10÷39ですが、これは何を意味しているのかと言いますと、課税床面積を同じとした場合、40階に至って固定資産税が1階のそれの一割増となる様、設定している為です。

 

では、具体的な計算例を示す事にします。

課税床面積が60㎡の、同じタイプの部屋が1階から40階まであると仮定します。

1階の部屋は補正なしですから、補正課税床面積は60㎡のままです。

10階は、同補正率が(10-1)×10÷39+100=102.30769(%)。

従いまして補正課税床面積は60×102.30769÷100=61.385㎡となります。

20階は、同補正率が(20-1)×10÷39+100=104.87179(%)。

ですから補正課税床面積は60×104.87179÷100=62.923㎡となります。

30階も同様に、(30-1)×10÷39+100=107.43589(%)。

補正課税床面積は60×107.43589÷100=64.462㎡となります。

40階は同補正率が110%ですから、補正課税床面積は60×1.1=66㎡です。

 

以上の様に補正課税床面積が、階が上がるごとに増えていきますので、必然的に固定資産税が上がる仕組みなのです。

相続税対策の温床

マンション一棟全体としての固定資産税の税収は変わらないのに、何故税改正をする必要があるのでしょうか?。

この背景には、税改正前ですと高層階の高価な物件を買う事によって、相続税の節税対策が出来るというメリットがあったのです。

 

「固定資産税と相続税とが、どう繋がるの?」といった疑問が浮かび上がるのは当然だと思います。

実は建物の場合、固定資産税評価額と相続税評価額とは一致しているのです。

 

では、具体例を挙げて相続税対策のからくりを説明します。

二階の2LDKを購入しようとすると5500万円、40階の専有床面積が同じの2LDKを購入しようとすると9000万円掛かるとします。

税改正前ですと、床面積が同じですので、どちらを購入しても固定資産税評価額は同じになります。

一般に、固定資産税評価額は購入価格よりも低く設定されておりますので、今、仮にその評価額を3500万円とします。

すると相続税評価額も3500万円となります。

 

今、現金を一億円持っている年配者が相続税対策を思案しているとします。

現金のまま持ち続ければ、一億円が相続税の課税対象となってしまいます。

ところが、先のマンションを購入すればどうなるでしょう。

二階の2LDKですと、手元に現金として残るのが、(一億)-5500万=4500万円。

相続税評価額が3500万円ですから、4500+3500=8000万円が相続税の課税対象となります。

続いて40階の2LDKを購入した場合です。

手元に残る現金は、(一億)-9000万=1000万円。

これに相続税評価額3500万円を加えると4500万円が、相続税の課税対象となります。

お分かり頂けたでしょうか。

 

つまり、40階の2LDKを購入する事によって、相続税の課税対象を一億円から4500万円に縮小できた訳です。

ですから、タワーマンションの高層階の購入は、富裕層の相続税対策の温床になっていたという現実があったのです。

今回のタワーマンションの固定資産税の税制改正は、こうした事実の是正も大きな狙いなのです。

 

加えて、一般に高層階の価格は低層階に比べて1.5倍か、場合によってはそれ以上となる事があるのに、改正前ですと固定資産税が同じです。

これは、高層階の区分所有者ほど固定資産税が相対的に低くなっている事を意味します。

依然漂う高層階の割安感

けれども改正後であっても、例えば40階の固定資産税は1階の1割増です。

「4割増、5割増であってもいいのではないか」といった声もちらほら出ている様です。

こうなりますと、改正後であっても高層階の部屋は依然として割安感がありますので、駆け込み需要が期待出来るかもしれません。

ただ、不動産投資をやろうとする方々の中には、ひょっとして尻込みしてしまうケースが出てくるかもしれません。

今後、高層階の固定資産税がさらに上がる可能性があるとなりますと、投資シミュレーションに狂いが出てきますし、利回りの確保も怪しくなります。

投資ですから、空き室の期間が長くなってしまうなど、ただでさえリスクを背負っているのに、それに税の上昇が加わるのでは、たまったものではないかもしれませんね。

 

そんな波乱要因を含んだタワーマンションですが、今後も人気は続きそうです。

知人や親戚が遊びに来ても、充実したゲストハウスがありますし、中にはプールを備えたものもあるとか。

高層階ですと夜景がとても綺麗らしいですね。

その上、高度が有る為に窓を開けても虫が入って来ないというのですから、何とも贅沢な話です。

これ程のメリットがありながら、思ったほど家賃が高くないという声も多いようです。

ともあれ、今後の動向を見守っていくしかなさそうですね。

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