職場でも学校でも、そしてプライベートでも、自分の思い通りに行かないことは往々にしてあることです。そうしたときに不の感情が湧いてくるのは人間として自然ではあるものの、それを周囲に見せないというのも重要なスキルの1つですよね。
そして、感情のコントロールができるというのも知性、つまり「頭がいい」の1つの要素でもあります。
ここでは、理由はどうあれ、落ち込んでしまったときの感情のコントロール術をご紹介したいと思います。
目次
≪「落ち込むこと」自体は問題ではない≫
「頭がいいこと」と、自分の感情を把握していて、それをコントロールできることというのは関連性があります。どれだけ頭のキレる人でも、感情を揺さぶられることで失敗することはありますし、普通の人であっても「感情の怖さ」を理解しておけば、大失敗を避けることができるのも事実です。
多くに人にとって、「頭がいい」状態で過ごすには、感情が落ち込んだり、軽い「うつ」状態になったときに、どのようにして対処して乗り切るかが大きなポイントになります。
誰だって気分が落ち込むときはありますが、それ自体は大きな問題ではありません。一番の問題は、気分が落ち込んだときに悲観的なモノの見方しかできなくなることで生じる悪循環です。自分を不幸だと考える人や、どうも頭がよく働かないという人は、不幸の悪循環・愚行の悪循環に迷い込んでしまっている例は多いです。
例えばお酒が好きな人なら、暇なときは深酒することだってあるでしょう。一度生活リズムが狂うと、その翌日は起床が遅くなり、その日の夜はまた夜更かししてしまったり・・・夜更かしするとまたお酒を飲んで朝が遅くなりといった具合で、生活リズムが狂ったままになり、十分に睡眠がとれていないから業務効率まで下がってしまうようなことは往々にしてあるのです。
こうした場合に一番ダメなのは、「自分はついお酒を飲んでしまうダメな人間だ。業務効率も落ちたまま。なぜ自分はこんなにも意志が弱いのか?」と悩んでしまうことです。
タイトルに書いた通り、落ち込むこと自体は問題ではなく、この場合に問題なのは「お酒を飲んで夜更かしすること」です。お酒が好きな人は飲酒自体がストレス解消になるので、それは否定せず、「お酒を飲んだら夜更かしせずに寝る」を習慣にすれば、翌朝もすっきり起きて業務に集中できるようになるでしょう。
落ち込んでしまったときに多くの人は、深く反省してしまいがちです。それ自体は仕方のないことですが、反省してばかりでは前進しません。ここはひとつ、「落ち込む原因を作らない」ための習慣を身につけてみてはどうでしょうか。
≪「悩む」暇があるなら「休憩して頭を冷やす」習慣を!≫
「悩む」と「考える」は違う!
哲学者は「悩んだ先に新しいものが見えてくる」といいます。悩むのは思春期の一時期においては意味のあることかもしれませんが、悩むことは仕事や勉強において何ら生産性はないと思っていいでしょう。では、「悩む」と「考える」の違いは何でしょうか。
ある外資系コンサルタントに言わせれば、
- 「悩む」=答えが出ないという前提のもとに、考えるフリをすること
- 「考える」=答えが出るという前提のもとに建設的に考えを組み立てること
この2つの定義は、似ているようで全く違うものです。
「悩む」という行為は解がないという前提のもとに成立し、いくらやっても徒労感しか残らない行為です。解決できるものを「問題」とする立場からは、答えがない(=解決策がない)事象は「問題」ではなく、ひとまず無視するべき対象です。恋愛関係や家族・友人といった「向かい合い続けることに意味がある」という類のものを別にすれば、悩むことには意味がないのです。
特に仕事や勉強においては、悩むことは時間の無駄以外の何物でもありません。仕事というのは何かを生み出すためにあるので、答えを生み出せない「悩む」行為は無駄なのです。これを明確にしないと、「悩む」と「考える」を混同して、あっという間に貴重な時間が過ぎ去ってしまいます。
悩んでいると気づいたら頭を冷やそう!
具体的には、10分間真剣に考えてみて埒が明かない事象があれば、そのことについて考えるのは一旦ストップしましょう。それもう悩んでしまっている可能性が高いです。
このように、「悩む」と「考える」を明確に区別することは、忙しいビジネスパーソンには非常に重要です。仕事・勉強は「答えが出る」という前提に立っている必要があります。
落ち込んでいると悩みやすく、考えはまとまりにくい
少し前置きが長くなりましたが、私たちが悩む対象というのは、答えが存在しないものがほとんどです。特に落ち込んでいるときの「悩み」は、過去へ過去へと遡っていくのも特徴です。
「なんで自分は大学受験に失敗したのか」「なんであのとき、好きな人に告白する勇気がなかったのか」といった具合です。一見して答えはありそうですが、答えが分かったところで過去は変えられないものです。前向きに、原因を分析するなら「じゃぁ、今からどうする?」という行動計画に通じますから、ここまで進むならそれは「考えて」います。
しかし「なんであのとき・・・」で止まるようなら、それは「悩んで」います。ちなみに落ち込んでいるときはここで止まる傾向があります。そして「やっぱり自分はダメなんだ」という自己嫌悪に陥るのです。
そうは言っても、落ち込んでいるときは悩んでしまうのが人間ですし、その方が人間味があっていいのかも知れません。しかし、精神衛生上悪いですし、本当にうつになってしまうこともあるでしょう。「落ち込んでいるときは敢えて思考ストップ」もマイナスの感情をコントロールする術なのです。
≪今、目の前にあることをする≫
どれだけ強気な人でも落ち込むことはあります。そんなときはどうしてもネガティブな方向へ物事を考えようとしてしまうものだと理解しましょう。そして、本当に落ち込んだときに「あ、自分は今落ち込んでいるな」と気づいたときに、そこからどのように脱出すればいいでしょうか。
悪循環に陥ることなく、早めに「落ち込み」を脱出するにはいくつかの方法がありますが、大正時代に開発された「森田両方」という精神療法が役に立ちます。森田療法が治療の対象とするのは「不安神経症」という症状で、不安にさいなまれる状態が病的なまでに進行した症状です。
森田療法においては、患者は一週間くらいの間、食事をとる以外はゴロゴロさせて、それ以外は何もさせません。そうすると不思議なことに、不安があろうが人に会いたくなかろうが、やはり人にあってみたいと思うようになるようです。仕事の失敗が怖くて仕方がないというような人でも、何もすることがなければ逆に仕事をしてみようかという気持ちになります。
森田療法では、重度の不安神経症の患者にはこのようにして「生きる欲望」が湧いてくるまで何もさせず、その後軽作業をさせて、少しずつ作業のレベルを上げていくという治療をします。
それでは、入院するほど症状が重くないときはどうすればいいでしょう。忙しいビジネスパーソンに「何もしない」は流石に実現性がないでしょう。従って「今目の前にある、やるべき仕事や勉強をしよう」ということになります。どんなに不安があったとしても、とにかく今ある課題があるなら、それに集中しましょう。
そのことに集中していたら、そうした不安や落ち込んだ気持ちは忘れてしまいます。だから不安であっても落ち込んでいても、今すべき仕事があるならそれを片づけましょう。この考え方を「症状不問」といいます。疲れていても落ち込んでいても、その状態の自分を受け入れて、自分がやるべきことをやります。
こうすることで不安が不安を呼ぶという悪循環を断ち切ることができます。
これは実は、うつ病患者にも当てはまることがあります。型にはまった生活パターンがあり、何か目の前にやるべきことがあった方が楽なケースがあります。
だから、会社員の人なら落ち込んでも変に有給を取るようなことをせず、とにかく出社します。提示で帰ってもいいでしょう。それでも勤務中は仕事をこなします。
会社員であれば、管理職でなくとも1日の中でどのような順序で仕事をするかはその人に委ねられていることが多いでしょう。「うわ、やらかした!」と思って落ち込むような事態があれば、翌朝の業務設計はあまり複雑なものではなく、ひたすら手を動かせるような業務を集中的に集める業務設計がいいかもしれませんね。例えば報告書のまとめ書きなど、自分にとって比較的簡単に集中力を発揮しやすいものを翌朝午前中に寄せるといいでしょう。
学生さんなら、自分の得意な科目がいいでしょう。人間誰しも、得意科目を勉強したがり、苦手科目は(必要性そっちのけで)勉強したくないものです。好きな科目に集中して取り組んでいるうちに、不安・落ち込んだ気持ちは忘れることができます。
主婦(主夫)なら炊事・洗濯・掃除に没頭します。料理も出来合いのものを買ってこないで、調理をするといいでしょう。
そうやって曲がりなりにも何かに集中していると、不安は軽減されてきます。もし会社を休んだり、家で何もしないでテレビばかりみているようなら、その間に自分が積み上げたものはゼロです。この「ゼロ」が余計に不安を喚起してくるのです。本家の森田療法は、比較的長時間「ゼロ」の状態を作って、段階的に作業を高度化してきますが、通常の会社員や学生が同じ前提に立つことは、やはり現実的ではありません。
ひとまず出勤して仕事をするのですが、仕事の出来不出来には拘らないことをおススメします。不安で何も仕事にならないよりは、たとえ1でもアウトプットできればいいのです。
さいごに
ここまでで、不安な気持ちや落ち込んだ気持ちがあるときの対処法を紹介してきました。
いずれもその時だけの対処だけでなく、「落ち込んだら○○する」という習慣化が可能なものになっているので、ご自身の感情コントロールに役立てていただけると幸いです。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。
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